種類株主総会を忘れている

近年ベンチャーキャピタルからの出資は、種類株式で行われるのが一般的となっています。
種類株式を発行する前は、ある行為を行う場合に株主総会の要否を検討するだけで足りました。しかし、種類株式を発行た後は、ある行為を行う場合に種類株主総会の要否も検討する必要があり株主総会の難易度が一気にあがります。
また、ベンチャーキャピタルとの投資契約の中である行為を行う場合にベンチャーキャピタルへの事前通知やベンチャーキャピタルの事前承認が必要な事項が定められていることもあります。
そのため、ある行為を行うにあたっては下記の3点を検討する必要があります。

1ベンチャーキャピタルの事前通知・事前承認がいるのか。
2取締役会の決議なのか、株主総会の決議が必要なのか
3種類株主総会の決議が必要なのか

過去の議事録を拝見すると、種類株式の決議が必要であるにもかかわらずその決議を経ていないケースが散見されます。

種類株主総会を忘れると大変なことになりますのでその要否と適切に判断する必要があります。

どのような場合に種類株主総会が必要となるのか

会社法では、種類株主総会の決議を要する事項として様々なものが定められていますが、ベンチャー企業において種類株主総会の決議が必要な時としては以下のようなものがあります。

1 拒否権付き株式が発行されている場合

拒否権付き株式(黄金株式ともいいます。)が発行されている場合で、種類株主総会の決議を要する事項として定められている行為を行う場合には、種類株主総会の決議が必要となります。

会社法第108条第1項第8号
八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの

2 会社法第322条第1項に定められている行為を行う場合

種類株主総会の決議が必要な場面として会社法第322条第1項に列挙されています。同条に列挙されている行為を行う場合には、種類株主総会の決議が必要となります。

ベンチャー企業において、当該条文に基づき種類株主総会の決議が必要となる場面としては、種類株式の追加をする場面が多いと思います。
例えば、A種優先株式を発行している会社が、B種優先株式を新たに発行する場面や、既に発行済のA種優先株式について優先配当の額を増額させるなどの内容の変更を行う場面です。これぞれ、会社法第322条第1項イ、会社法第322条第1項ロの規定に基づき必要となります。

なお、条文では種類株主総会の決議を要する場合として「損害を及ぼすおそれがある場合」と規定されています。上記の例では損害を及ぼすおそれがあるものとして種類株主総会の決議を経ているのが通常です。

会社法第322条第1項
種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
一 次に掲げる事項についての定款の変更(第百十一条第一項又は第二項に規定するものを除く。)
イ 株式の種類の追加
ロ 株式の内容の変更
ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
一の二 第百七十九条の三第一項の承認
二 株式の併合又は株式の分割
三 第百八十五条に規定する株式無償割当て
     以下省略

3 募集株式又は新株予約権を発行する場合(譲渡制限株式に限る)

すでに発行済みの種類株式について新たに当該種類の株式を発行する場合や新株予約権を行使した際に当該種類が発行される新株予約権を発行する場合において種類株主総会の決議が必要となります。

例えばA種優先株式を1000株発行している会社が、追加でA種優先株式を1000株を発行する場合や新株予約権を行使するとA種優先株式が割当られる新株予約権を発行する場合です。

会社法第199条第4項
4 種類株式発行会社において、第一項第一号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
会社法第238条第4項
4 種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、当該募集新株予約権に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を目的とする募集新株予約権を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。

種類株主総会の決議を忘れるとどうなるのか

種類株主総会の決議が必要な場面において、決議をしていない場合には、下記のとおり株主総会での決議が無効となってしまいます。


1 拒否権付き株式が発行されている場合
「当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。」

2 会社法322条第1項に定められている行為を行う場合
「当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。」

3 募集株式又は新株予約権を発行する場合(譲渡制限株式に限る)
「当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。」

まとめ

種類株主総会の決議が欠けていたという事は、社内で発見される事は難しくIPOやM&Aのデューデリジェンスの際に発覚するというケースが多いです。
前記、1 拒否権付き株式が発行されている場合には、種類株主総会が必要な場合が登記簿に記載されまていすので忘れるという事は少ないかもしれません。
忘れがちなのが2 会社法第322条第1項に定められている行為を行う場合の決議でしょう。
種類株主総会の要否の判断するには会社法を理解する必要があります。
少しでも不安がある場合には専門家にご相談されることをお勧めします。

 

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