「株主総会って、Zoomだけで開催しちゃっていいんですか?」
投資家が全国・海外に散らばっているスタートアップにとって、
株主総会をリアル開催のみで行うことは、日程調整だけでも大きな負担になる。
オンライン会議が当たり前になった今、株主総会もオンラインで完結させたいと考える経営者は多い。
本記事では、「スタートアップ向けモデル原始定款」第17条(株主総会)を題材に、
株主総会のオンライン開催に関する基本的な考え方を解説する。
このモデル定款は、株式会社スマートラウンドとBAMBOO INCUBATORが共同開発し、
YOU司法書士法人代表の松本光平が開発メンバーの一人として参画した無料公開テンプレートは
こちら
株主総会はいつ開催しなければならないか
定時株主総会は、一般に事業年度終了後一定の期間内に招集しなければならないとされる(会社法296条1項)。
多くの会社は、定款で「毎事業年度終了後3か月以内に招集する」といった定めを置いている。
これは、事業年度終了後に確定申告等の税務手続きを行う期限
(原則として事業年度終了後2か月以内、申告期限の延長制度もある)とも関連するため、
決算スケジュールとあわせて意識しておく必要がある。
株主総会はZoomで開催できるのか
なお、「スタートアップ向けモデル原始定款」第17条自体は、
開催場所やオンライン参加の可否について定めたものではなく、
招集の時期(定時株主総会は毎事業年度終了後3か月以内、臨時株主総会は必要に応じて随時)のみを定めた条項である。
開催方法(オンライン・ハイブリッド等)は、条文に明記されるものではなく、
運用上の論点として以下で解説する。
株主総会の「開催場所」に関する会社法の考え方は、近年変化している。
産業競争力強化法の特例により、一定の要件を満たす上場会社等が、経済産業大臣・法務大臣の確認を受けることで、
リアル会場を設けずオンラインのみで株主総会を開催する「バーチャルオンリー株主総会」が可能になったとされる。
もっとも、多くのスタートアップが該当する非上場企業の実務としては、
リアル会場を一切設けない「バーチャルオンリー」形式での開催は基本的には難しいとされる。
実務上現実的なのは、原則としてリアルの開催場所を確保した上で、
Zoom等のオンライン会議システムを使って株主に遠隔から参加してもらう「ハイブリッド参加型」の開催である。
ここで留意したいのは、ハイブリッド型で遠隔参加する株主が議決権を行使する場合、
当日その場でオンライン上のやり取りだけで議決権行使を完結させるのではなく、
事前に委任状や議決権行使書を提出する形で議決権行使を済ませておく必要があるとされる点である。
当日のオンライン参加は、あくまで説明・報告を聴く場という位置づけになる、という整理である。
これをいわゆる「ハイブリッド参加型」という。
株主総会の議決方法と委任状の実務
株式会社の意思決定は、普通決議・特別決議等、
会社法上の要件を満たした決議によって行われる(会社法309条等)。
加えて、スタートアップの実務でよく使われるのが、株主総会を実際に開催せず、
株主全員が書面(または電磁的方法)で議案に同意することにより、
株主総会の決議があったものとみなす制度である(会社法319条、いわゆる「みなし決議」)。
株主数が少ないスタートアップでは、この制度を活用することで、
株主総会そのものの開催・運営の手間を省略できる場面が多いとされる。
委任状・議決権行使書の回収方法は、郵送に限らず、メール添付等データでのやり取りが増えているとされる。
株主総会運営を支援するクラウドサービスを活用し、委任状の回収・集計を効率化する例もある。
代表的なサービスの一つがスマートラウンドである。
「スタートアップ向けモデル原始定款」の共同開発元でもあり、
YOU司法書士法人はスマートラウンドのパートナー登録を行っており、
株主総会運営を含む資本政策管理の効率化ツールとして積極的に活用を推奨している。
モデル原始定款第17条がこう設計されている理由
「スタートアップ向けモデル原始定款」第17条は、
「当会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後3か月以内にこれを招集し、臨時株主総会は、必要がある場合にこれを招集する。」
と定めており、招集の時期のみを定めた条項である。
開催場所やオンライン参加の可否そのものは条文上規定されていないが、
株主数が少なく、投資家が地理的に分散しがちなスタートアップの実情を踏まえると、
実務上はリアル開催を基本としつつオンラインでの参加を組み合わせる、
ハイブリッド型の運営が採られることが多いと整理できる。
実務上の注意点・落とし穴
委任状・議決権行使書の回収方法
オンライン参加を認める場合、委任状や議決権行使書をどのように収集するか
(郵送、PDF送付、株主総会運営サービスの活用等)をあらかじめ決めておくことが望ましいとされる。
当日になって回収方法に迷うケースは少なくない。通信障害への備え
オンライン開催・ハイブリッド開催の場合、通信トラブルが生じた場合の対応(休憩・延会等)を
あらかじめ検討しておくことが望ましいとされる。早めの準備が重要
実務上、スタートアップからの株主総会運営に関する相談が開催直前になりがちであるとされる。
招集期間(後述の記事18で解説)を踏まえると、
少なくとも開催の2週間〜1か月程度前には準備を始めることが望ましいとされる。
まとめ
株主総会のオンライン化は、スタートアップにとって実務上の負担を大きく軽減できる一方、
完全なバーチャルオンリー開催は非上場企業では基本的に難しく、
リアル開催を基本としたハイブリッド運営が現実的な選択肢となる。「スタートアップ向けモデル原始定款」は、
こうした実情を踏まえた設計になっている。
次回は、同じくCEOが開発メンバーとして参画・出演している第18条(株主総会招集通知)を解説する。
テンプレート本文はこちらから無料でダウンロードできる。
参考動画
BAMBOO INCUBATOR
「株主総会はZoomで開催しても良い?/スタートアップの株主総会/スタートアップ向けモデル原始定款第17条の解説」
