「株主総会の招集通知、LINEのメッセージで送ってしまってもいいんでしょうか?」
創業メンバーや投資家との連絡手段が主にチャットツールになっているスタートアップでは、
こうした疑問が生まれるのは自然なことである。
招集通知は株主総会の適法性に関わる重要な手続きであり、「なんとなく」で済ませるとトラブルの火種になりかねない。
本記事では、「スタートアップ向けモデル原始定款」第18条(株主総会の招集通知)を題材に、
招集通知の期間・方法の基本的な考え方を解説する。
このモデル定款は、株式会社スマートラウンドとBAMBOO INCUBATORが共同開発し、
YOU司法書士法人代表の松本光平が開発メンバーの一人として参画した無料公開テンプレートがこちら
株主総会はいつまでに招集しなければならないか
株主総会の招集通知は、会社の機関設計によって発送期限が異なる。
取締役会設置会社
原則として株主総会の日の2週間前までに通知を発する必要があるとされる(会社法299条1項)。取締役会非設置会社
原則として1週間前まで、さらに株式の譲渡制限を定めている会社(非公開会社)であれば、
定款でこれを下回る期間を定めることができるとされる(同条項ただし書)。
また、株主全員の同意があれば、招集手続き自体を省略して株主総会を開催できるとされる
(会社法300条)。株主数が少ないスタートアップでは、この規定が実務上よく活用される。
取締役会非設置会社の株主総会招集通知
取締役会を設置していない会社の場合、招集通知の方法について会社法上の定めはなく、
理論上は口頭・電話等の方法でも足りるとされる。
もっとも、実務上、口頭のみで通知を行う例はほとんど見られないとされる。
実務で多いのは、メールにPDFファイルを添付して送付する方法、
またはSlack等のチャットツールで送付する方法である。
PDF形式にする理由としては、保存性・一覧性の観点が挙げられる。
動画タイトルにある「LINEで送る」という論点は、
こうしたチャットツールを使った通知方法の延長線上にあるものとして位置づけられる。
もっとも、通知を送った・送らなかったで争いになった場合に、
チャットツールのメッセージがどこまで証拠として機能するかは別の問題であり、
法律上「送ってよい」ことと、実務上「どのように送るのが望ましいか」は分けて考える必要がある
(※要確認:LINE等のメッセージアプリ固有の証拠化・記録保存上の留意点については、Legal部門での確認が望ましい)。
取締役会設置会社の株主総会招集通知
取締役会を設置している会社の場合、招集通知は原則として書面で行う必要があるとされ、
電磁的方法(メール等)による通知を行うには、
あらかじめ株主一人ひとりから個別に承諾を得る必要があるとされる(会社法299条2項・3項等)。
この承諾を得るための連絡自体も、書面または電磁的方法で行う必要があり、口頭のみでは足りないとされる。
実務上、一度株主から電磁的方法による通知の承諾を得れば、
以後は毎回あらためて承諾を取り直す必要はなく、継続して電磁的方法で通知を送付できるという運用が多いとされる。
取締役会非設置会社に比べて、通知方法・記載事項ともに厳格に扱われる傾向がある。
モデル原始定款第18条がこう設計されている理由
「スタートアップ向けモデル原始定款」第18条は、
招集期間を「中3日」に短縮する内容をデフォルトとして採用している。
たとえば2月18日に招集通知を発した場合、送付日と開催日を除いた中3日間を確保すると、
最短で2月22日に株主総会を開催できる計算になる。
非公開・取締役会非設置であることが多いスタートアップの機関設計を前提に、
法律上許容される範囲で招集期間を短縮し、
機動的な株主総会運営を可能にする設計になっていると整理できる。
実務上の注意点・落とし穴
招集通知の方法を柔軟にする一方で、後日「通知を受け取っていない」といったトラブルを避けるため、
チャットツールを使う場合も、既読確認やスクリーンショットの保存など、
何らかの形で記録を残しておくことが望ましいとされる。招集期間の短縮に関する定款規定は、取締役会の設置有無・公開会社かどうかによって扱いが異なる。
将来、取締役会を設置する、あるいは株式を公開する(上場を目指す)機関設計の変更を行う際は、
この条項も見直しが必要になる点に留意が必要である。株主全員の同意による招集手続きの省略(会社法300条)は便利な制度だが、
「全員」の同意が必要である点に注意が必要である。
一部の株主から同意が得られない場合は使えない。
まとめ
招集通知は地味な手続きに見えて、株主総会決議の有効性そのものに関わる重要な手続きである。
「スタートアップ向けモデル原始定款」は、機動的な意思決定を求められるスタートアップの実情を踏まえ、
招集期間を「中3日」に短縮する設計を採用しつつ、
後日のトラブルを避けるための実務上の工夫(記録の保存等)にも留意が必要な分野である。
本記事で、CEO出演回4本(第4・5・17・18条)の解説はひとまず完結する。
本シリーズは全10回を予定しており、
第1条(商号)・第2条(事業目的)・第3条(本店所在地)・第8条(相続人に対する売渡請求)
第16条(ストックオプション・プール)についても順次公開予定である。
テンプレート本文はこちらから無料でダウンロードできる。
参考動画
BAMBOO INCUBATOR
「株主総会招集通知をLINEで送る方法?/スタートアップの株主総会招集通知/招集期間を短縮する方法とは/スタートアップ向けモデル原始定款第18条の解説」
