相談事例「有限会社を株式会社に変えたい」

有限会社を株式会社に変えることはできますか?
というご相談を頂くことがあります。

平成18年5月1日の会社法施行後は、新たに有限会社を作ることはできなくなりました。しかし、会社法施行時にすでに存在していた有限会社は、株式会社の区分のなかで「特例有限会社」として存続しています。

この特例有限会社は、定款の変更をすることで株式会社に変更(特例有限会社の株式会社への移行)することができます。

 特例有限会社のメリット

1.決算公告が不要

株式会社では、毎年の定時総会の後に決算公告をする義務があります。
この決算公告は、一般的には官報で行うこととなりますが、官報の掲載費用として、7万円程度かかります。

一方、特例有限会社では、この決算公告の義務がありません。

2.役員の任期がない

株式会社では、取締役と監査役の任期はそれぞれ、取締役2年・監査役4年(株式譲渡制限のある株式会社では、10年まで任期を伸長することができます。)と定められています。
そのため、役員改選期の定時株主総会では役員を選任する必要がありますし、同一の方が再任された場合でも役員変更登記が必要となります。

一方、特例有限会社では、任期がありませんので改選の必要もありませんし、当然役員変更登記も不要です。

3.希少性

前記のとおり会社法施行と同時に有限会社は設立することができなくなりました。もちろん、株式会社から有限会社に変更することもできません。
そのため、株式会社に変更する必要性や変更したい理由が無い限りは、有限会社のままとしておくことをお勧めします。

特例有限会社のデメリット

1.合併ができない

特例有限会社を存続会社とする吸収合併は出来ません。逆に特例有限会社を消滅会社とする吸収合併はできます。
また、特例有限会社を承継会社とする吸収分割も出来ません。

このように組織再編に制限がありますので、有限会社を存続会社とする合併を行いたいという場合には、特例有限会社を株式会社に変更した後に合併の手続きを行う必要があります。なお、株式交換と株式移転も行うことができません。

2.株式譲渡制限の変更ができない

株式譲渡制限のある会社では、株式譲渡の際には株主総会又は取締役会の承認が必要です。
特例有限会社においても、株式譲渡の際に譲渡の承認が必要なことは同じですが、特例有限会社では、株主間で株式の譲渡を行う場合には譲渡の承認は不要となっています。
つまり、会社の知らない間に株主の持ち株比率(議決権割合)が変わってしまう可能性があるという事です。

社長がほとんどの株式を保有しているといった場合には、他の株主の持ち株比率が変わっても会社運営に支障はないと思われますが、それ以外の場合には注意が必要です。

3.信頼性のイメージ

世間では、特例有限会社は株式会社より信頼性が劣るというイメージがあります。
会社法施行前は、株式会社の設立には資本金1000万円以上かつ取締役3名・監査役1名が必要という要件があり、それを満たすのが難しいために有限会社を設立するといったケースがあったことから、現在でもこのようなイメージが残っているものと思われます。

株式会社への移行の手続きについて

1.株式会社の定款案の作成

株式会社の定款案を作成します。株式会社としての商号、目的、役員の任期、取締役会の設置の有無や監査役の設置の有無などを検討し新しい定款案を作成します。
なお、株式会社への変更と同時に会社の目的や役員も同時に変更することができます。
特例有限会社が変更登記を行うと目的変更や役員変更につき、それぞれ登録免許税がかかりますが、株式会社へ移行と同時に変更する場合には、株式会社への移行の登録免許税のみで変更することができます。

2.社員総会での定款変更決議

定款変更には特別決議が必要となりますので、通常の議案とは決議要件が異なります。
特別決議は、総株主の半数以上であって当該株主の議決権の4分の3以上の多数による賛成が必要です。

3.登記申請(解散と設立)

定款変更の決議後2週間以内に登記をする必要があります。
特例有限会社を株式会社に変更することは、単なる定款変更ですので権利義務関係に変更はありません。
しかし、登記手続き上は、特例有限会社の解散登記と商号変更による株式会社の設立登記を同時に行うこととなります。

費用について

報酬書類作成・登記申請:8万円
登録免許税株式会社の設立登記:3万円
有限会社の解散登記:3万円※1
手続き内容
  • 現状の定款の確認
  • 株式会社の定款の作成
  • 議事録等書類の作成
  • 有限会社の解散登記
  • 株式会社の設立登記

※1資本金の額×1000分の15 又は 3万円のいずれか高い額となります。ただし、移行と同時に資本金の額が増加した場合には、当該増加分については1000分の7となります。

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