東証の市場区分変更と東京プロマーケット

2022年4月を目途に、東証の市場区分の変更が予定されています。
現時点で公表される情報のまとめと東京プロマーケットへの影響を考えてみます。

市場区部変更の目的

現在の市場区分を明確なコンセプトに基づいて再編し、国内外の多様な投資家から高い支持を得られる魅力的な市場にするためと説明されています。

現在の市場の問題点

東証1部の企業数が多すぎる

東証の上場企業数は、3,726社ありますが、そのうち2,179社、実に6割近くが東証一部に属しています。
日本を代表する上位市場が一番企業数が多いというのは、違和感があります。
なぜこのように状況になったかというと、
一つは、東証1部に直接上場する場合の基準の緩和があります。
現在、1部上場には、「250億円以上」の時価総額が必要となります。
以前の基準は「500億円以上」でしたが、2008年のリーマン・ショックで新規上場が急減したため、2012年に従来の半分である「250億円以上」に基準が引き下げられたという経緯があります。

もう一つは、東証2部やマザーズから東証1部に“くら替え”をする場合の基準が 東証1部への新規上場に比べて大幅に低いというのがあります。
東証2部やマザーズからのくら替えの場合、なんと時価総額「40億円以上」の条件を満たせばいいことになっています。
東証1部企業の増加ペースが高まった2011年以降では、くら替えによるものが7割超にのぼるという状況でした。

時価総額の差が大きい

現在、東証1部上場銘柄の時価総額を見ると、トップのトヨタ自動車(7203)の時価総額が約22兆7000億円に対して、一番低い企業の時価総額、20億円程度しかありません。このように時価総額が低く、流動性も低い企業の銘柄が1部上場企業といえるのでしょうか

2020年4月にGAFA+Mと呼ばれるアメリカのテクノロジー企業5社の時価総額が、東証1部上場企業の時価総額を初めて上回りました。
このままでは、日本の株式市場の魅力の低下してしまいます。

市場区分はどのように変わるのでしょうか

現在の市場区分と新市場区分

まずは、現在の市場区分は以下の4つの区分となっています。

東証一部…流通性が高い企業向けの市場

東証二部…実績がある企業向けの市場

JASDAQ…多様な企業向けの市場(実績がある企業・新興企業)

マザーズ…新興企業向けの市場

「新市場区分の概要等について」株式会社東京証券取引所

そして、新市場区分は以下の3つの区分となる予定です。

プライム市場…多くの機関投資家の投資対象となりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場。

スタンダード市場…公開された市場の投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上にコミットする企業向けの市場。

グロース市場…高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方で、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場。

「新市場区分の概要等について」株式会社東京証券取引所

市場区分の変更で変わる事

新規上場基準と上場維持基準が原則として共通化

今までは、上場廃止や降格の条件が上場基準よりも緩かったため、一度上場をしてしまえば なかなか廃止になりません。そのため、今の1部市場のように、上場基準である時価総額をも下回るような 企業が市場に残っているという状況になっています。
しかし、今後は、グロース市場などの新興企業向けの市場を目指す企業にとっては、上場基準ギリギリではすぐに廃止基準がみえてしまうため、上場が難しくなる事予想されます。
また、各市場区分がそれぞれ独立しているものとして、市場区分間の移行に関する緩和された基準は廃止されます。
上記でも記載しましたが、内部からの鞍替えの基準が緩かったため本来は、1部市場の規模感に見合わない企業が1部に上場できてしまっっていたという状況が変わります。
異なる市場区分への移行の場合には、移行先の市場区分への上場を申請し、新規上場基準とどうようの基準による審査をうける必要があります。

流通株式の定義の見直し

実態として流通性が乏しいと考えられる株主が保有する株式については、株主の保有比率に関わらず流通株式から除外されることになります。

東京プロマーケットへの影響

東京プロマーケットに関しては、2022年の市場区分の変更には含まれていません。
では、影響が無いのかというとむしろ逆で、より東京プロマーケットの注目度が高まっていくという点で大きな影響があると考えています。
理由の一つは
上場基準と上場廃止基準が統一されることにより、本則市場への上場がより難しくなります。そのため、マザーズ上場を目指していた企業が、 2022年の市場区分変更を見越して方針を転換し、本則市場へのステップアップとして、まずは東京プロマーケットに上場をするという企業が増えてくると思われるからです。
実際、マザーズ上場を目指していた企業が、方針を転換し東京プロマーケットに上場するという事例も出ています。
2020年5月25日の東京プロマーケットに上場したC Channel株式会社もその一つです。
また、
市場区分の変更により、上場廃止になってしまう企業も一定数でてしまうことが予想されます。
そのような企業の退避場所として、東京プロマーケットを選択するという企業がでてくるのではないかと思われます。

東京プロマーケットの見通し

上場プロマーケットに上場したい企業が増えた場合、上場は難しくなるのでしょうか
数年前までは、売上3億程度とか、規模が小さく、急成長しない企業でも東京プロマーケットには上場ができていました。
しかし、今後は難しくなっていくものと予想されます。直近でも、売上規模が10億程度ないと上場は難しい感覚です。
これからの東京プロマーケットに求められる企業は、ある程度規模があり安定的な収益基盤はあるものの、利益水準が低く、新区分のスタンダード市場への上場がまだ難しい企業、もう一つは、高い成長可能性はあるもののグロース市場の基準にはまだ達しない企業の二が目安になっていくと考えています。

つまり、本則市場への前段階のステップアップのための市場という位置づけに なっていくのではないかと予想されます。

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