「相続、どこから手をつければいいの?」そんな不安に答えます

「親が亡くなったけれど、相続って何から始めたらいいの?」「兄弟間で意見が合わなくて手続きが進まない……」「財産の名義変更や手続き、どこに何を出せばいいのか全く分からない」——これは、私たち司法書士に寄せられる相談の中でも、特に多い声です。

相続が発生すると、残されたご家族は葬儀や法要といった感情的にも大変な時期を過ごしながら、同時に膨大なやるべきことに直面します。まずは相続人の調査や戸籍の収集、相続財産の洗い出し。次に、遺言書の有無を確認し、場合によっては相続人全員での協議が必要となります。そして不動産や預貯金、有価証券などの名義変更、解約手続き。これら一つ一つは専門的な知識を要するもので、慣れない方にとってはまるで「迷路」のように感じられることでしょう。

さらに、相続手続きには法的な判断が絡む場面も多くあります。たとえば、「法定相続通りで進めるべきか」「不動産を誰が相続するのが適切か」「一部の相続人が支払った費用をどう精算するか」など、個々のケースに応じて最善の選択肢を判断しなければなりません。これを家族だけで判断し、進めていくことには大きなストレスが伴い、結果としてトラブルや感情のもつれを生んでしまうこともあります。

こうした相続の困ったに対して、専門的な知識と実務経験を持った司法書士が関与することで、手続きをスムーズかつ円満に進めることが可能になります。中でも「遺産承継業務」と呼ばれるサービスは、司法書士が相続人全員の代理人となり、遺産の全体像の把握から、名義変更や分配まで、相続のあらゆる手続きをワンストップでサポートするものです。

本記事では、相続手続きの全体像とともに、司法書士が提供する「遺産承継業務」の具体的な内容や、そのメリットについてご紹介します。相続手続きに不安を感じている方や、専門家の支援を検討されている方にとって、少しでも安心していただけるような情報をお届けできればと思います。

「相続手続きはこんなに複雑」知っておきたい全体像

「相続」と聞くと、「財産を家族で分けるだけ」と思われる方も多いかもしれません。しかし、実際に相続が発生すると、その手続きの多さと複雑さに驚かれる方がほとんどです。相続手続きには法律、税金、不動産、金融など様々な分野の知識が関わり、家族だけで対応しようとすると時間も労力も非常にかかります。

まず、相続が発生した際に必要となる主な手続きは、大きく以下の5つに分けられます。

1.相続人の調査(戸籍の収集・相続関係説明図の作成)

誰が法的に「相続人」となるのかを確認するために、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍を全て取り寄せる必要があります。場合によっては数十年前の戸籍を取り寄せる必要があり、手間がかかるうえに解読も難しいことがあります。これを基に「相続関係説明図」という、いわば家系図のような資料を作成します。

2.相続財産の調査

相続財産には、預貯金、不動産、有価証券、自動車などの「プラスの財産」と、借金やローンなどの「マイナスの財産」が含まれます。どのような財産がどこにあるのかを把握し、それぞれについて評価を行う必要があります。また、通帳の履歴確認や不動産の登記事項証明書の取得など、個別の調査手続きも必要です。

3.遺言書の有無の確認

相続手続きを進める前に、遺言書があるかどうかの確認が不可欠です。自宅に保管されている場合もあれば、公正証書遺言として公証役場に保管されているケースもあります。遺言書がある場合、その内容が相続手続きの進め方を大きく左右します。

4.各相続財産の名義変更・解約手続き

財産の内容に応じて、銀行や証券会社、市区町村、不動産登記所など、さまざまな機関に対して手続きを行う必要があります。たとえば不動産であれば法務局に相続登記を申請し、銀行口座であれば凍結を解除して相続人の口座に資金を移動させる必要があります。提出書類も機関によって異なるため、確認と準備に手間がかかります。

5.遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

相続人全員で遺産の分け方について話し合い、合意に至ったら「遺産分割協議書」という文書を作成します。全員が実印を押し、印鑑証明書を添付する必要があり、協議の内容に不備があると名義変更などの手続きが受理されない可能性もあります。

これらの手続きを一つずつ見ても非常に煩雑ですが、実際にはこれらが同時進行で絡み合いながら進んでいくことがほとんどです。たとえば、財産調査の結果次第で協議内容が変わったり、遺言書の内容により相続人の役割が変わったりと、状況に応じた柔軟な判断が求められます。

また、これらの手続きを進めるうえで大きな壁となるのが、「家族間のコミュニケーション」です。相続人間での意見の違いや感情的な対立があると、協議が難航し、手続きが大幅に遅れることも少なくありません。特に「代表相続人」が手続きを担うケースでは、他の相続人から不信感を抱かれたり、情報共有が不十分になったりするリスクもあります。

こうした複雑かつ繊細な手続きを、司法書士が専門家として関与することで、手続きの順序や進め方を明確にし、相続人間の公平な調整を図ることが可能になります。特に「遺産承継業務」は、司法書士が相続人全員の代理人として、全体の手続きを一括して担うことができるため、時間や労力の削減だけでなく、相続人間の信頼関係を守る意味でも非常に有効な手段です。

次の章では、実際にこの「遺産承継業務」がどのように進められるのか、具体的な内容をご紹介していきます。

「全部任せたい」に応える司法書士の遺産承継業務とは?

「相続のことは全部まとめて任せたい」——これは、司法書士に相続相談をされる方から最も多く聞かれる要望の一つです。相続手続きは、戸籍の収集から始まり、財産の調査、名義変更、遺産分割協議、さらには不動産の売却や預金の解約、相続税の検討まで多岐にわたります。それぞれの作業が煩雑で、しかも一つでも手順を誤ると手続きが滞ったり、相続人間でのトラブルに発展したりする可能性もあります。

そのため、「自分一人で対応するのは無理だ」と感じるのは当然のこと。そんなときにこそ、司法書士による「遺産承継業務」が力を発揮します。

ワンストップで手続きを丸ごと代行

遺産承継業務とは、相続人全員から委任を受けた司法書士が、相続財産の調査・管理・名義変更・分配までを一括して行う専門サービスです。相続人それぞれが個別に手続きを行う必要がなくなり、司法書士が「相続人全体の代理人」として、すべてのプロセスを主導します。

具体的には次のような流れで進みます。

  1. 相続人全員から委任を受ける
     まず司法書士は、すべての相続人から正式な委任状を受け取り、「遺産承継業務契約」を締結します。これは、単なる手続き代行ではなく、相続人全体の合意形成を前提とした法律業務です。
  2. 相続関係の調査と確定
     被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集し、誰が法定相続人であるかを正確に確定します。その上で、「相続関係説明図」を作成します。
  3. 相続財産の調査と目録作成
     不動産の登記簿、金融機関の残高証明、株式や投資信託の明細、自動車や動産類の所有確認などを行い、相続財産の全体像を把握します。借金や保証債務がある場合も含めて、詳細な「財産目録」を作成します。
  4. 分割方法の提案と協議書の作成
     相続財産の種類や評価、相続人の希望を踏まえ、司法書士が最適な分割案を複数提示し、全員の合意形成を図ります。その上で、「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員の署名・押印を取得します。
  5. 名義変更・解約手続きの実施
     不動産は法務局への相続登記申請、預貯金は各金融機関での解約・払戻し、株式は証券会社への名義変更申請など、必要なすべての実務手続きを司法書士が行います。
  6. 財産の分配
     分割協議に基づき、現金や売却代金、不動産の所有権などを各相続人に分配。相続人が実際に手にする財産が確定します。

このように、相続人が個別に手続きを行うことなく、すべてのプロセスを司法書士が統括・実行することで、手間やストレスを大幅に軽減することが可能になります。

揉めごとの予防にも効果的

遺産承継業務は単に「手続きを代行する」だけでなく、相続人同士のトラブルを未然に防ぐためにも非常に有効です。例えば、ある相続案件では、不動産の評価を巡って兄弟間に意見の相違がありました。しかし司法書士が第三者の立場で評価方法や税務上の影響を説明し、具体的な数字に基づいた分割案を提示したことで、冷静な話し合いが成立し、無事に協議がまとまりました。

このように、感情的な対立に発展しがちな相続問題も、専門家が介入することで客観的かつ理性的に整理され、全員が納得のいく形に落ち着くことが多いのです。

🏠 ケース1:疎遠な甥・姪が絡む不動産と預貯金の相続(沖縄の事例)

ある相談者Aさんは、亡くなった父の遺産(住宅・預貯金)を相続したいと考えていましたが、相続人には県外に住む姉と弟、さらに疎遠で連絡先が不明な異母兄弟が4人(うち1人既に他界し代襲相続)おり、合計10人が関係する複雑な状況でした。司法書士は次のようにサポートしました。

【STEP1】戸籍収集と相続人の確定

                  全相続人の調査、郵送や電話で疎遠相続人にも連絡。

【STEP2】財産目録の作成

                  不動産や預貯金以外の資産や負債にも漏れがないか該当機関へ調査。

【STEP3】意見調整と合意形成

                  沖縄独特の仏壇・位牌の承継も考慮し、全員納得の上で遺産分割協議を進行。

【STEP4】換価分割の提案

                  不動産を売却し、預貯金と併せて現金で分割する案を提示し、公平性と流動性を両立。

【STEP5】登記・解約・分配

                  相続登記後、不動産売却・預貯金解約を行い、換価分割した金銭をそれぞれへ送金。

【STEP6】税務対応

                  税理士と連携し、居住用財産の譲渡所得控除を利用して節税を実現。

結果:疎遠で顔を合わせなかった相続人同士の協議も司法書士の調整でスムーズに進行。最終的にAさんら3名で無事に分配を完了し、家族関係も改善されたという安心の結末でした。

🏘️ ケース2:母の自宅を売却——相続人間の疎遠さが課題に(神奈川の事例)

別の事例では、母親名義の不動産と預貯金を相続する際に、相談者から遠方の親族である甥・姪との連絡が課題でした。司法書士が連絡から協議までをサポートし、結果的に「不動産を売却し、代金を現金で分ける換価分割」にて全員合意しました。そのうえで、相続登記・不動産売却・分割送金を一括支援しています。これにより相談者は煩雑な手続きを気にせず、手間も感情的負担も軽減できたとのことです。

🏡 ケース3:兄弟・甥姪が相続人——戸籍調査から登記まで(沼津のモデルケース)

沼津市の例では、叔父Bさんの相続で、相続人が兄弟や甥姪計5名に上り、しかも伊豆の国市に山林など複数不動産がありました。司法書士は次のように進行しました。

【STEP1】相続人の調査と財産把握

                  戸籍と名寄帳取得、口座・通帳確認などを通じ財産の全容を把握。

【STEP2】相談と方向性の確認

                  Aさんが不動産を取得し、代償金を他の相続人に支払う形でおおまかな方向性提案。

【STEP3】遺産目録および協議書作成

                  各相続人と協議し、文書で正式に合意。

【STEP4】名義変更と金融手続き

                  法務局で相続登記、金融機関での残高証明取得と預貯金承継の処理。

結果:調査・書類収集から登記・金融機関対応、分配まで半年~1年。専門家が関与したことで、相談者は時間的・精神的負担が大きく軽減されたと報告されています。

揉める前に!公平な第三者の存在がもたらす安心感

相続手続きにおいて、最も避けたいのが「相続人同士の揉め事」です。被相続人が亡くなり、遺産を分けるという極めてデリケートな場面では、ちょっとした行き違いや認識の違いが原因で、深刻な対立に発展することも少なくありません。実際に、兄弟姉妹間で長年口をきかなくなってしまった、という事例も耳にします。

そのきっかけとして多いのが、「代表相続人による一方的な進行」です。例えば、長男が勝手に銀行の手続きを進めたり、不動産の名義変更を行ったりすると、他の相続人が「相談もなく勝手にやられた」と感じ、不信感が募ります。意図的でなくても、情報共有の不足や説明の不十分さがトラブルの火種となるのです。

そこで大きな役割を果たすのが、司法書士という“公平な第三者”の存在です。司法書士が相続人全員の代理人として業務を受託する「遺産承継業務」では、すべての相続人に対して公平・中立な立場で対応し、意見の違いを丁寧に整理しながら調整を図ります。感情的なやり取りを直接することなく、専門家を通じて冷静に話を進めることができるため、相続人全体にとって心理的な安心感が生まれます。

また、司法書士は法律に基づいて手続きを進めるため、誰か一人に有利・不利な判断は行いません。財産の評価や分割案も、客観的な基準をもとに提示されるため、感情的な争いになりにくく、結果として全員が納得できる形に落ち着く可能性が高まります。

さらに、相続に慣れていない方にとっては、「これで合っているのか?」「何か間違っていないか?」という不安もつきものです。司法書士のような国家資格者が全体を監督し、必要な書類の作成から登記・金融手続きまで責任を持って対応することで、手続きの正確性と信頼性が担保されます。

家族が安心して将来を迎えるために、そして、遺された人たちが良好な関係を保つために。相続という人生の大きな分岐点において、司法書士が果たす役割は極めて重要です。揉め事を未然に防ぎ、全員が納得できる相続を実現するためにも、「第三者の公平な目線」を取り入れるという選択は、非常に賢明だといえるでしょう。

相続の“困った”は早めにプロへ相談を

相続は、人生の中でそう何度も経験するものではありません。しかし一度起きてしまえば、戸籍の取り寄せや財産の調査、遺産分割協議、不動産の登記、金融機関での解約手続きなど、やらなければならないことが山のように存在します。しかも、それぞれが専門的で複雑なうえ、感情的な対立も起こりやすいのが相続の難しさです。

「相続が発生したけれど、まず何をすればいいのか分からない」
「家族と話すのが億劫で、手続きが進まない」
「自分ひとりでは手に負えない気がする」
そうしたお悩みを抱える方にこそ、おすすめしたいのが司法書士へのご相談です。

司法書士は、相続登記をはじめとする法的手続きのプロフェッショナルであると同時に、相続人間の利害を調整しながら手続きを円滑に進める相続手続きの総合コーディネーターでもあります。中でも「遺産承継業務」は、相続人全員の代理人として、相続手続きの全体像を把握し、実務と調整の両面から支援できる数少ない制度です。

実際、「もっと早く相談していればよかった」という声も少なくありません。後回しにしてしまうことで、相続人間の関係が悪化したり、手続きが滞ったり、最終的に法的トラブルへと発展してしまうこともあります。そうなる前に、なるべく早い段階で専門家の知見を取り入れることが、何よりも重要です。

当事務所では、相続に関する初回相談を丁寧に行い、状況に応じて必要な手続きや進め方を分かりやすくご説明しています。遺言書の有無、相続人の構成、不動産の有無、財産の種類や金額に応じて最適な方法をご提案し、ご希望に応じて一括して対応させていただくことも可能です。

相続でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。「何から始めればいいのか分からない」というそのお気持ちに、司法書士として誠実に寄り添い、最後まで安心して任せていただけるよう、全力でサポートいたします。

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